Q−2 〜財務諸表の作成方法―2つのアプローチ〜

P教授A社とB社は、貸借対照表(/)や損益計算書(/)を作成するにあたって、違ったやり方を採用しています。それぞれの方法の長所・短所を比較検討してください。

[A社]毎期末に資産、負債をすべて実地に調べて目録を作成する。これに基づいてB/Sを作成し、前期末と当期末のB/Sの純財産(資本)を比較して損益を計算している。

[B社]期中に生じたすべての取引を記録し、そのうち収益項目と費用項目を選んで差額を計算して損益を算出している。なお、期末B/Sは、期首B/Sを出発点として、それに損益関連項目以外の取引を加減して作成する。

Q−3 〜会計ルールのための前提―会計公準〜

簿記の勉強をひと通り終えたBさんは、会計理論の勉強を始めたところ、「会計公準」という言葉に出会いました。「公準」という言葉自体、今まで聞いたことがなく、その内容や性質についてどうもイメージができなかったのでP教授に尋ねてみたところ、まず、つぎのような点について考えてみてはどうかと言われました。(- -;)

P教授

(1)たとえば、数学で勉強した「公理」という概念と同じですか、違いますか?

(2)会計公準の内容として、一般にどのようなものが考えられていますか?

(3)その他にどのような会計公準が考えられますか?(自分で考えても結構)

(4)連結財務諸表と個別財務諸表とでは、会計公準に関してどこが違うのでしょうか?

(5)中間財務諸表と年次財務諸表とでは、会計公準に関してどこが違うのでしょうか?

(6)会計公準の内容を変化させて、新しい会計を考えてみよう。(現実的でなくても構わない。)

(7)会計公準は会計においてどのような役割を果たしているでしょうか?

さてあなたなら、これらの点についてどのように考えますか。

Q−4 〜「企業会計原則」の意義〜

今度はA君が先生に質問にきました。

(1)〜もしも「企業会計原則」がなかったら…〜

A君:先生、どうして「企業会計原則」というものがあるのですか?

P教授:では逆に、もしも今、企業会計原則が存在していないとしたらどのような問題が起こるか、考えてみてはどうでしょうか? (可能な限り列挙してみよう!)

(2)〜会計基準の国際化〜

先日P教授は、ある国際会計問題に関する会議に出席したところ、つぎのような議論を聞いたそうです。

証券アナリスト:経済活動のグローバル化に伴い、企業の活動も国際的となっているのでその活動状況を表わす会計の方法そしてその基準もただ一つでないと財務諸表の分析ができなくなってしまう。1つの企業について異なる財務諸表が存在するというのは、どう考えてもおかしなことだ。

日本の企業の経理責任者:これまでやってきた会計方法が認められなくなると、会計システムの変更など財務諸表作成のコストが多大なものになる。たとえば日本では伝統的に保守的経理を尊重しており、こういった日本的慣行を大切にして欲しい。

大蔵省証券局長:しかし、橋本前首相が唱えた金融ビッグバンの特徴は、「市場性」「透明性」「国際性」にあり、会計についていえば、グローバルスタンダードによってディスクロージャーを高めて、フェアな競争を促すということになります。こういう視点から考えれば、国際的な統一基準へと向かうのは当然の流れであり、これこそまさに「会計ビッグバン」といえるものだと思います。

日本の公認会計士:ただわが国の場合、商法や税法による拘束という特殊事情もあるので必ずしも統一基準の採用に移行できないという面もあります。

会計学者:会計基準も社会制度の一つである以上、各国の歴史、文化等に影響されて発達してきたものなので、簡単に統一化しようというのは幻想にすぎない。エスペラント語も失敗した。それぞれの違いを尊重した上で、注記などによってそれを調整することが現実的である。

国際会計基準委員会(IASC)議長:いまやグローバルスタンダードの時代なのだ。経済活動の国際化に対応するためにも、国際会計基準の確立とその普及が急務である。

事実、国際会計基準は整備されつつあり、近い将来、証券監督者国際機構(IOSCO)がこれを正式な基準として承認する方向にある。そうすれば、国際的金融市場で資金調達しようとする企業は、どこの国の企業であろうと、この基準にしたがって会計を行うことになる。だから各国の国内基準もこれに合致させておく方がいいのである。

さて会計学に深く関心をもつ一人として、あなたはどのように考えますか。

(*国際会計基準委員会(IASC)と証券監督者国際機構(IOSCO)について調べてみよう。)

(3)〜国際会計基準への道〜

国際会議終了後、P教授は企業会計審議会のメンバーでもあるQ教授と話す機会があった。

P教授:日本の会計基準のグローバリゼーションを考えるとき、具体的にはどのようなアプローチがあるのでしょう。

Q教授:たとえばトヨタなどは、ニューヨーク証券取引所に上場したので、アメリカの基準で財務諸表を提出していますが、そのままでは日本で認められないので、別に日本の基準で作成しています。まさにダブルスタンダードですね。

P教授:でもそれだとコストがかかって大変でしょう。それに会計の本来の姿としても望ましいのかどうか…。

Q教授:その通りです。それで、いま企業会計審議会では、国際的な会計基準の動向を考慮しながら、いろいろと改訂作業を行っています。

P教授:いっそのこと、国際会計基準(IASC)をそのまま採用することに決めてしまえばいいのではないですか。

Q教授:会計基準が整備されていなかった、いわゆる発展途上国ではそういうやり方をとっていますが、日本の場合、これまでに積み重ねてきた実務慣行や諸制度があるので、これを否定してしまうようなことは現実的ではないのです。

P教授: ……

この問題についても、どのように考えたらいいでしょうか。なお、日本における最近の改訂作業としてどのようなものがあるかも調べてみましょう。

Q−5 〜学食での会話―「真実性の原則」〜

ある日、P教授が学食で豚汁うどんを食べていたところ、つぎのような会話が聞こえてきました。[まさか!?などと言わないように…(^_^;]

学生A:最近、土地が値下がりしているみたいだけれども、企業の決算書ではバブルの頃の値段のままで表示されている。あるいはもっと昔の古い値段のものもあるそうだ。これで真実な報告といえるのだろうか?

学生B:そうそう、そういえば工場の建物や機械についての減価償却の方法など複数のやり方が認められていて、所詮、見積り計算に過ぎない。そんな風にして作られる会計報告について、「真実」という言葉を使うのはチョットうそっぽいよね。

学生A:真実というからには、唯一絶対のものでないといけないのでは…

さて、あなたならどのように応えますか。

Q−6 〜茶封筒会計システム?―「正規の簿記の原則」

S企画事務所は、宣伝広告用のイラストの注文を受け、これを作成している。従業員は、社長のほかには2人しかおらず、取引の規模も小さいため、当社は正式の帳簿として現金出納帳しかつけていない。支払いに当たっては、現金のほかに小切手も振り出しているが、当座預金出納帳はない。ただ、小切手を振り出した際の控えや領収書はきちんと所定の袋に入れて整理・保管されているようだ。

 社長の話では、その他、請求書、納品書等各種の証憑書類もそれぞれ別の封筒に入れて整理保存しており、決算時には棚卸も行ったうえで、正規の決算書を作成しているという。

【参考】

 [取  引]      [帳簿その他]             [決 算]

 現 金 取 引  →  現金出納帳              (棚卸手続き)

 小切手振出し   → 茶封筒A(控え・領収書)        ⇒B/SP/L作成

 掛売り、掛買いなど→ 茶封筒B(請求書・控え・納品書・控え)

 その他の取引   → 茶封筒C・茶封筒D・茶封筒E

さて、この会社の実務は「正規の簿記の原則」に合致していると思いますか。

Q−7 〜簿記の勉強との違い?―「資本取引と損益取引」〜

簿記を勉強し始めたばかりのときにA君は、「資産−負債=資本」という式を習いました。また、取引の種類として、交換取引・損益取引・混合取引についても学びました。

 しかし、企業会計原則の一般原則を勉強し始めたときに、「資本取引と損益取引の区別」に関する原則のところで、A君は何がなんだか分からなくなってきました。A君の疑問はおおよそつぎのようなものです。

(1)「資本取引」というのは何のことだろう?

(2)なぜ、資本取引と損益取引を区別しないといけないのだろう?

(3)簿記で決算手続のときに、「損益勘定」の残高(利益)を「資本勘定」に振替えるが、これは、「資本取引と損益取引の区別」に反するのだろうか?

(4)二つの取引を区別するための根拠あるいは基準は、何なのだろうか?

さてA君に対して、あなたならどのように説明しますか。

Q8 〜不正の構造 ―ディスクロージャーの問題〜

P教授:最近、いろいろな組織で重大な問題が起きていますね。たとえば、厚生省[薬害エイズ]、大蔵省[山一證券などの行政指導]、防衛庁[資材調達]、神奈川県警[覚醒剤使用その他]など…。なぜこういうことが頻発するのだろうか。

C君:要するに、きちんと情報公開をしていないのがいけないのではないでしょうか。

P教授:たしかにその通りです。それでは皆さん、つぎの点について考えてみてください。

(1)なぜ、このような構造が生まれるのか。

(2)それを防ぐにはどうしたらよいのか。

(3)身近な組織として、たとえば大学において、このような問題はないだろうか。

Q−9 〜どこまで知らせるべか?―「明瞭性の原則」〜

Dさんは、お父さんが役員を務めるS株式会社の創立20周年記念パーティーに出席しました。そこで、高そうなワインを見つけて飲んでいたところ、つぎのような会話が聞こえてきました。(^_^;

[その1]

証券アナリスト:最近、とくに企業によるディスクロージャー(情報開示)の重要性が指摘されており、これからの企業は、とにかく詳細な情報でもどんどんディスクローズしていく必要がありますね。

社     長:そうはいっても、企業機密に類することもあり、すべて公表してしまうと競争相手に先を越されてしまうかもしれない。

証券アナリスト:いえいえ、企業にとって不都合と思えることでもあえて公表することで、株主や投資家の信頼が得られるのです。新株発行や起債のときに、資金調達のコストが安くなるので、結果としてはその方が得ですよ。

社     長:うーん、それはそうだが…。それにしても開発途上の研究など、公表するわけにはいかないだろう。

… … … … … … …

[その2]

証券アナリスト:会社がこれから直面する諸問題に対して、どのような展望をもち、どのように対処する予定なのか、あるいは結果としてどの程度の業績を見込んでいるのかを知らせてもらえるとありがたいですね。そういった意味でも、予測情報のディスクロージャーも是非、積極的に推進してほしいところです。

社     長:しかし、発表した業績予測と大幅に違った場合に責任をとらされることになるのではないか、それが心配だ。

:予測情報がディスクローズされた場合、それに対しても監査意見を付さなければならないだろうか。仮にそうなるとしても、信頼性の高い監査証拠を入手することは困難だろう。どこまで責任を負えるのか心配だし、訴訟になると厄介だ。

 さて、ディスクロージャーのあり方をめぐる(1)(2)の問題についてあなたはどのように考えますか。



Q−10 〜より適正な会計か利益操作か?―「継続性の原則」〜

(1)〜定額法から定率法へ〜

S製鉄(株)は、今期決算にあたり、T工場設備の減価償却方法を定額法から定率法に変更し、この変更により、変更前に比べて経常利益が1億円少なくなった。なお、変更理由としては、「T工場の操業が軌道に乗り、高い操業率が確保された・・・」ことが挙げられており、この点について当社の監査人であるU監査法人は、特に意見を限定しなかった。

さて、S社の処置およびU監査法人の対応に対して、あなたはどのように考えますか。

(2)JICPA(日本公認会計士協会)での議論〜

継続性問題をめぐってJICPAでつぎのような議論があった。

 A氏:会計方法の変更を利用して利益操作が行なわれる危険がある。なんとかしなければいけない。

 B氏:正当な理由があるかどうかをチェックすれば、それはある程度防げるのではないか。

 A氏:いや、正当な理由などあってないようなものだし、実際、ほとんどフリーパスなんだ。もともと、いろいろな方法を認めているからいけない。いっそのこと、減価償却でも棚卸方法でも、ただ一つの方法だけ認めるように決めてしまえばいい。

 B氏:それでは、経理自由の原則という理念は失われてしまうが、それでいいのか。

 C氏:それなら、いろいろな方法からの選択の余地は認めておくが、いったん採用したら、絶対に変更を認めないということにしたらどうだろう。

さて、あなたはどのように考えますか。

Q−11 〜何のため、誰のための保守主義?〜

企業会計原則を勉強し始めたC君は、「保守主義の原則」のところで、「適当に健全な会計処理をしなければならない」という文章を読んで何か釈然としないものを感じました。そして、ゼミの時間につぎのような疑問を述べました。

(1)「適当に健全な会計処理」(保守的な会計処理)と書いてあるけれど、具体的にはどのような処理のことなのだろうか。

(2)それに、そもそもこういう規定は、誰のために必要なのだろうか。ことによると、ある人たちには有利になるが、別の人たちには不利にならないだろうか。

(3)注解では過度の保守主義を禁じているけれども、普通のレベルと過度のレベルとどのように区別したらよいのだろうか。

さてC君の疑問について、あなたならどのように説明しますか。

Q−12 〜会計情報のあり方―単一性か多元性か?〜

Dさんも企業会計原則を勉強していますが、単一性の原則の原則に関連して、つぎのような疑問をもちました。

(1)証券取引法に基づく財務諸表と税務申告上の計算書とは、その様式および内容とも異なっているが、それでも単一性の原則は守られているといえるのでしょうか?

(2)もし、将来、物価変動会計に基づく財務諸表や環境会計に基づく財務諸表も同時に公表することになったとしたら、そのとき単一性の原則というのは、意味を失うことになるのでしょうか?

(3)最近では企業のホームページや証券取引所などでさまざまな情報を公開しており、誰でもアクセスして、自分の関心に応じて情報を利用できるようになってきました。そこで思うのですが、企業はそのような基礎的なデータベースをできるだけ公開し、あとは利用者に任せるというシステムにしたらいいのではないでしょうか。

たとえば、学食でいうと、企業の側であらかじめ決まったルールで用意する“定食方式”ではなく、自分で選べる“カフェテリア方式”(あるいはもっと極端にいえば、食材、調味料、調理用具など揃えておいて、“自分で作る方式” !?)みたいに…。

あなたならどのように説明しますか。